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2016年7月

親の介護と遺産分割

親の遺産を兄弟で分けようとしたときに

介護した子と介護に関わらなかった子が相続人。

そういった場合、話し合いで解決できなくて

家庭裁判所に遺産分割調停の申立をすることがあります。

民法904条の2には「寄与分」といって、

亡くなられた方の財産の維持又は増加に

特別の寄与があった相続人の相続分を増やすといった制度があります。

分かりやすい例でいうと、子が無償で親の家業に従事し、

経営主の親の名義で財産が築かれた場合などです。

 

では、親の介護は特別の寄与があったといえるでしょうか?

特別の寄与となる要件は

① 療養看護の必要性

 例えば介護認定がどのくらいであったか。

 また、毎日お見舞いに行っても完全看護の病院に入院中であれば

 療養看護が必要であったとはいえません。

② 特別の貢献

 親と同居して家事の援助をしたというだけでは

 特別の貢献があるとは言い難いです。

③ 無償性

 療養看護の対価として金員を受け取っていれば無償性は認められません。

④ 継続性

 どのくらいの期間が必要かは場合によると思いますが

 1年以上は必要かと思われます。

⑤ 専従性

 介護が専業とまではいかなくても

 生活の中で介護の負担の割合が高いものである必要があります。

 

(事例)

 親がケアマネやヘルパー等、他人が家に入るのを嫌がり

 要介護認定を拒むうえに病院嫌いで治療を要するのに通院もしなかった。

 子は、生活のためにいくつか短時間のパートを行い

 その合間と夜間は寝る時間も削って介護を行った。

⇒ 調停になった場合に寄与分を主張する者が証拠を出さないといけませんが

 介護認定も通院記録もなく介護行ったという主張だけでは

 財産の維持や増加について特別の寄与があったと立証できず

 実際に寄与分を認めてもらうのは厳しいかもしれません。

 

 そもそも療養看護は、被相続人の財産の維持や増加を目的としたものではないですし

 介護はそれ自体が身体的、精神的負担が非常に大きいものですから

 現行の寄与分制度については批判の声があります。

 

 現在、相続法の改正が法務省の法制審議会で議論されていて、

 2016年4月には「中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台」が公表されました。

 療養看護型の寄与分についての見直しの対象となっているようです。

 

 親が亡くなった後、子らが争うのは親にとっても本意ではないでしょう。

 とりあえず生前に親ができることは、

 介護をしてくれる子に多くの財産を残すというような内容の遺言を作成することでしょうか。

 

 介護の苦労は経験した者しかわからないと思います。

 お金での解決が全てはありませんが、

 せめて苦労が報われやすい法改正がなされることを望みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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